手術前の不安:術後の吐き気【薬剤科】
手術を受ける患者さまは、緊張と様々な不安を感じられていることでしょう。
「痛かったらイヤだな」「気分が悪くなったら、どうしよう」などが代表的な不安だと思います。
おおさかグローバル整形外科病院では、様々な職種が連携して、手術前から患者さまの諸問題を抽出し、
早期に対策を立て、入院中や退院後の生活がより良いものであるように活動しています。
手術後の患者さまに出現する可能性のある症状のひとつが吐き気です。
医学用語では「術後悪心・嘔吐」と言い、全身麻酔による手術の後に起こることがあります。
この項では、術後悪心・嘔吐について説明していきます。
どんな人が術後悪心・嘔吐を起こしやすいのでしょうか?
以下のような患者さまは術後の吐き気を起こしやすいと考えられ、特に3項目以上当てはまると高い確率で発生します。
成人の場合
・女性
・50歳以下
・非喫煙者
・乗り物酔いしやすい、したことがある
・過去に術後の吐き気を起こしたことがある
小児の場合
・3歳以上
・思春期(8~18歳くらい)の女性
・乗り物酔いしやすい、したことがある
・術後の吐き気を起こした家族(親・兄弟)がいる
術後悪心・嘔吐を防ぐことはできるのでしょうか?
当院では、患者さまからの聴き取りなどにより術後悪心・嘔吐の発生リスクを分類し、対策を行なっています。
前述の術後悪心・嘔吐のリスクが1つ以上ある患者さまには、異なる作用機序を持つ複数の薬剤の使用を検討します。
【術後悪心・嘔吐に使われる代表的な吐き気止め薬】
◆セロトニン5-HT3受容体拮抗薬
⇒腸粘膜から放出されるセロトニンに反応し、嘔吐中枢への刺激を抑え、吐き気を防ぎます。
◆コルチコステロイド
⇒催吐物質が脳に運ばれるのを防ぐなど、様々な作用で吐き気を防ぎます。
◆ドパミンD2受容体拮抗薬
⇒脳(延髄)にあるドパミンD2の作用を妨害し、吐き気を抑えます。
これらの薬剤を使用することにより、術後悪心・嘔吐の発生率を低くすることができます。
しかし、残念ながら100%ではありません。
手術後に吐き気が起きた場合は、吐き気止めの薬を追加で使用することで治療ができます。
手術後に「気持ちが悪い」「吐きそうだ」という時には、我慢をせずにすぐに病院スタッフに伝えてください。
おおさかグローバル整形外科病院では、麻酔科医師・看護師・薬剤師などの医療スタッフが協働して、
様々観点からリスク評価を行ない、多角的なアプローチによる術後悪心・嘔吐の予防を実施しています。