『整形外科担当の薬剤師だけはなりたくない』【薬剤科】
整形外科は手術がメインで、薬は痛み止めだけで薬剤師が活躍する場が少なそうと、薬剤師になる前の私はそう思っていました。牧病院へ就職し、初めて担当したのが圧迫骨折の患者さんでした。痛みで生活が出来ない方に、多くのスタッフが自身の職域で係わります。私が痛みをとる為にできること、主治医の選択した薬の妥当性を確認し、納得した上でお薬の準備をするだけだと思っていました。しかし、現実は違いました。多くの方は何らかの既往があり沢山のお薬をすでに服用されています。高血圧で治療中の方は、ベッドの上で安静となり、動くことが少なくなる為か、食事で塩分制限ができている為か、血圧が下がることがあります。糖尿病の既往のある方なら、食事制限のおかげで、いつも飲んでいるお薬では低血糖になることもあります。薬剤師として働くからには、どんなお薬に対しても知識がないといけないと思ったのも事実です。上司から教わった言葉ですが、「何かについて全てを、全てについて何かを知るように努力せよ」英国の生物学者であるトーマス・ヘンリー・ハクスリーの言葉だそうです。薬剤師として、薬の全ての分野について知らないといけないし、何か一つの分野については深く知っておくべきだという意味と理解していました。(今確認したら、少し意味は違ったのかもしれませんが、)整形担当薬剤師でも、高血圧も糖尿病も脂質異常症も・・・知っておくべきですし、整形の分野で何か深く知識を得たいと思うようになりました。『私は整形外科の患者さんが大好きです。』私が牧病院職員の全体朝礼で言った一言です。入職して7年目のことでした。牧病院の整形外科病棟が、単科病院として開院と共に移動がきまり朝礼で話す機会をいただきました。なぜ、整形の病棟や患者さんが好きか。入院時には痛みの苦痛でお話しすることも大変ですが、退院する患者さんはみんな笑顔だからです。私がお薬を通じて関わることはほんの少しですが、患者さんが笑顔で退院できることに貢献できていると自負しています。話は変わるのですが、最初に係わった圧迫骨折ですが、入職時はコルセットをつけて安静加療するしかありませんでした。当院の中野脊椎センター長が牧病院に入職され、圧迫骨折も手術出来る症例があることを知りました。長く痛みをこらえていた患者さんが、手術することで痛みから解放されます。現在、おおさかグローバル整形外科病院では圧迫骨折を含む脊椎手術を担当する医師は4名、多くの患者さんに手術することが出来ています。 『8月・9月は忙しかった』こんなことは珍しいのですが、1か月の間に様々な研修会や学会に参加しました。8月24日はリウマチ学会主催の研修会、9月2日~4日は骨粗鬆症学会、9月17日18日はくすりと糖尿病学会、9月23日~25日は医療薬学会、コロナ禍もあって、会場参加に加え、WEB参加もありました。リウマチは近年お薬が進歩し治療選択は様々です。これからもっと勉強していきたいです。骨粗鬆症は整形の分野で深く勉強したいと一番に考えた分野です。骨の内部や骨表面の構造が変化し骨がもろくなる疾患です。圧迫骨折の多くは骨粗鬆症でもあることが多く、2度目の骨折を起こさないためにも治療開始する必要があると考えています。その延長で「骨粗鬆症リエゾンマネージャー」の資格を取得しました。糖尿病の既往は骨粗鬆症を疑うべき疾患の一つです。血糖値が高い期間が続くと、骨の構造も糖化現象が起き弱くなります。骨塩量は多くても、構造が弱ってしまうと折れやすくなります。骨折の患者さんは糖尿病を合併していることも多いです。医療薬学会では、他の病院での取り組みや様々な疾患についても学ぶことができます。当院と同じ整形病院で手術の際に薬剤師がどのように活躍しているか等を知り、当院でも取り入れることはできないかと考えることもあります。患者さんが笑顔で退院することのお手伝いが出来ている事に誇りを持ち、視野を広げてさらに精進していきます。